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RESPA法

目次

概要

RESPAとはReversible System Propagator Algorithmの略であり、Tuckerman et al. (1992) によって提案された。RESPAは時間発展演算子を利用した方法であり、時間反転対象性を持つ、様々な運動方程式に対して適用しやすいなどの利点がある。多時間刻みの方法に対しても適用が可能である。

Trotter公式による時間発展演算子の分解

古典粒子系のハミルトニアンは以下のように表される。

                (1)

ここでは粒子の位置、は粒子の運動量、は粒子の質量。は粒子全体の運動エネルギー、は粒子全体のポテンシャルエネルギーを示す。

リューヴィユ演算子

                (2)

またこれは正準交換関係から以下のようにも書ける。

                (3)

物理量の時間変化は全微分の関係から、リューヴィユ演算子を用いて以下のように表される。

                (4)

これを形式的に解くと、時刻における物理量

                (5)

ここでは時間発展演算子となっている。時間発展演算子をG とおく

                (6)

座標と運動量の時間変化は

                (7)

                (8)

RESPA法ではTrotter公式によって時間発展演算子を分解し、積分アルゴリズムを組み立てる。Trotter公式は、交換不可能な演算子に関して以下のように表される。

                (9)

                (10)

RESPAでは時間発展演算子は以下のような形式に分解される。

ここではランダウの記号と呼ばれるもので、誤差の程度を示す。

積分アルゴリズムを導く際に以下の公式が使われる。これらの関係はテーラー展開の公式などから得られる。

                (11)

                (12)

                (13)

Nose-Hoover法への適用

RESPA法をNose-Hoover法に適用する方法を示す。まず運動方程式は以下のように書かれる。

                (14)

                (15)

                (16)

                (17)

ここではNose-Hoover法で新たに導入された拡張系の変数である。は正の実数定数である。それぞれの次元は無次元、[kg・m2・s-1]、[kg・m2]である。

時間発展演算子を分解する方法は色々あるが、一例として以下のように表される。

                (18)

これを用いた場合の計算手順は以下のようになる。

初期条件として時刻での粒子の位置と運動量、力が計算されているとする。

  1. 新しい座標での力を計算する。
  2. 1から8を繰り返す。

参考にしたもの

Tuckerman, M., Berne, B. J. (1992): Reversible Multiple Time Scale Molecular Dynamics, the Journal of Chemical Physics, Vol. 97, Issue 3, pp. 1990-2001.
http://scitation.aip.org/getabs/servlet/GetabsServlet?prog=normal&id=JCPSA6000097000003001990000001&idtype=cvips&gifs=yes
http://cacs.usc.edu/education/cs653/Tuckerman-RESPA-JCP92.pdf
システム数理IV 牧野淳一郎
http://jun.artcompsci.org/~makino/kougi/system_suuri4_1998/all/all.html
MPDyn/Algorithm/Numerical integration of equations of motion (reversible RESPA)
http://staff.aist.go.jp/w.shinoda/MPDyn/theory.html